どうも、ヨシヒコです。
坂本直行さんの『雪原の足あと』を読みました。
小学生だった僕はまるっきり知らない名前の建物に家族で出かけたことを思い出し、全然興味がないなかでも目に留まったのは書きかけの馬。
この絵のインパクトだけは大きくて、子供ながらに
「描いていた人は無念だっただろう・・・」
そんなことを思った記憶だけは定かでした。
この本には、戦前の北海道で山岳を歩き回りスケッチした自然の風景や植物たち、共に過ごした人々との出来事が綴られています。
個人的に印象に残ったのがアイヌの又吉さんに関する記述です。
又吉さんは十勝アイヌの人物であり、その歴史の中で日高アイヌとの戦いもあったそうです。
北海道アイヌはひとつのまとまりだと思っていたけど、それぞれの生活圏で敵対しながら守るものがあったのだなと感じます。
彼の存在は、ただの歴史上の人物ではなく、彼の生き方や考え方が自然と人間との繋がり、そして先住民だったアイヌ民族が生きてきた土地としての歴史や人間味を深く考えさせるきっかけを与えてくれました。
また、物語の後半で描かれている「熊獲りの弥次馬になった話」も心に響きました。
母熊とともに仕留められた小熊に対して、坂本さんが抱いた感情
「恐怖感どころか、頭を撫でてやりたい気持ちすらおきる」
という言葉は、私自身も共感できるものでした。
狩猟を通じて自然に深く関わる中で、動物を仕留めるという行為は命をいただく重みを常に感じさせられる瞬間だと思います。
坂本さんの言葉から伝わるのは、命に対する尊敬と自然界への畏敬の念。
この距離感が、とても大切だと思いました。
現代では、人間と自然との距離感はさらに複雑な問題になっています。
野生動物による農作物への被害、狩猟文化の衰退、そして自然保護の必要性…。
答えのない問いに向き合いながら、自分自身の考えを模索することが重要だと改めて感じます。
『雪原の足あと』は、こうしたテーマについて深く考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
美しい自然描写に加え、人間と自然の共生についての鋭い洞察が詰まっています。
自然と向き合う新しい視点。
こんな時代だからこそ大切にしなくてはならないと思う次第です。