サボットスラグ弾のゼロイン調整と距離によるドロップ(落下)や威力などを考慮した鹿撃ちの実用範囲を調べてみた!

どうも、ヨシヒコです。

以前の新人狩猟研修に向けて、50mの射撃でスコープ調整をしたところ問題なし。
とはいえ、実際の100mや150m、もしくは200m先の鹿を狙った場合はどうなんだろう?

という疑問から、実際にサボットスラグ弾の実用範囲などを調べてみました。

まず初めに、スコープ調整のゼロイン(Zeroing)についての説明です。

これは、ライフルスコープの照準と弾の着弾点を一致させる調整作業のことで、簡単に言うとスコープを覗いたときに狙った場所に正確に弾が当たるようにするための調整です。

ゼロインの基本

ライフルスコープは工場出荷時のままだと、弾の着弾点が狙った場所とズレていることがほとんどです。

そのズレを修正するために、スコープの エレベーション(上下) と ウィンデージ(左右) の調整ダイヤルを使って、狙ったポイントに着弾するように合わせます。

ゼロインの手順

1. ゼロインの距離を決める
一般的には 100m(約109ヤード) でゼロインすることが多いですが、狩猟なら 50mや200m で合わせることもあります。

※自分が使っているVortex Crossfire II 3-9×40 BDC は弾道補正のことも考えて100mゼロインが標準的のようです。

2. 安定した射撃姿勢を取る
・射撃台やバイポッド、サンドバッグを使って銃をしっかり固定する。
・できるだけブレを少なくし、正確に撃てる環境を作る。

3. 試し撃ち
・狙った場所(ターゲットの中央)に3発撃つ。
・着弾点を確認し、スコープの調整が必要かチェック。

4. スコープの調整
スコープの 上下(エレベーション) と 左右(ウィンデージ) のダイヤルを回して、着弾点を狙った場所に移動させる。

•1クリックでどれだけ動くかは、スコープの仕様による。
(通常1クリック=1/4 MOA=約7mm @ 100m)
•例えば、100m先で10cm下に当たっているなら、上方向に約14クリック(10cm ÷ 0.7cm) 回す。

5. 再度試し撃ちして調整を繰り返す
調整後に再び3発撃ち、着弾点が狙ったポイントに収まるまで微調整する。

という流れが一般的なようです。

ゼロインの注意点
✅ 同じ弾を使う → 弾の種類(メーカー・弾頭重量)で着弾点が変わる。
✅ 風や環境の影響を考慮 → 風が強いと弾が流れるため、無風か弱風の時に行う。
✅ トルクレンチでスコープを固定 → スコープがズレるとゼロインが狂う。

サボットスラグ弾の距離によるドロップ(落下)計算

(1)50mのゼロイン調整に使用したサボットスラグ弾
・12番ゲージ
・ウィンチェスターの2 ¾インチ(2と4分の3インチ)
・1600fps(約488m/s)
・1オンス(約437.5グレイン)

(2)100m・150mで使用した場合の弾道計算
大気抵抗や気温、射撃条件によって多少変わりますが、一般的なデータとして以下のような弾道落下(ドロップ)が予測されます。

•50m:±0cm(基準点)
•100m:約-5cm(低く着弾)
•150m:約-20cm(低く着弾)

(3)狩猟での実践的な考え方
✅ 100mでは約5cm下に着弾する → ほぼ問題なく狙えますが、やや上を狙うといい。
✅ 150mでは約20cm下に着弾する → 鹿の胴体を狙う場合は、心臓よりやや上を狙うとよい。
✅ 200mではさらに落下が大きくなる(約50cm以上下に落ちる)ので、実用的な限界は150m程度。

サボットスラグは普通のスラグ弾より弾道がフラットですが、やはりライフル弾ほど遠距離には向きません。

100mをメインにしつつ、150mの撃ち方もイメージしておく感じです。

このズレを考慮すると、100mゼロインにしたほうが狙いやすくなる可能性もありますが、十勝の射撃場は50mしかないので釧路まで行く必要が出てきますね。

200mでのサボットスラグ狙撃はかなり難しい?

(1)200mでの弾道落下
50mでゼロインしている場合、200mでは約50~60cm以上落下する可能性が高いです。

これは、100mでは約5cm、150mでは約20cm落ちるのと比べて、急激に落下することを意味します。

仮に100mゼロインだった場合の弾道
•100m:0cm(基準)
•150m:約-15cm
•200m:約-45~50cm

つまり、200mではターゲットの50cmより更に上を狙わないと着弾しないという計算になります。

(2)200m狙撃の難しさ
①風の影響が大きくなる
•サボットスラグはライフル弾よりも弾速が遅く、200mに到達するまでに時間がかかる(約0.5秒前後)。
•その間に風の影響を強く受け、着弾が左右にズレる可能性が高い。
•特に横風(クロスウィンド)があると、30cm以上ズレることもある。

②弾のエネルギーが大幅に減少
•1600fps(約488m/s)で発射されても、200mでは弾速が約300m/s以下に落ちる可能性がある。
•鹿を確実に仕留めるエネルギー(最低1500J程度は後ほど説明)が残っていない可能性が高い。
•当たっても貫通せず、致命傷を与えられない可能性がある。

(3)サボットスラグ弾のドロップまとめ
200mでのサボットスラグ狙撃は、
❌ 弾道落下が大きい(50cm以上)
❌ 風の影響を受けやすい
❌ 弾のエネルギーが足りない可能性がある

という理由で、現実的には難しい。
実戦では100~150m以内での射撃に抑えたほうが確実ですね。

中途半端に撃つことよりも、風の影響やエネルギーの減衰を考えて、確実に仕留められる距離で撃つのがベストだと考えます。

鹿を確実に仕留めるためのエネルギーは最低1500J程度

これは運動エネルギーの計算と、実際に狩猟をされてる方の経験則との両方から成り立ってる計算となるので、参考程度のデータとなります。

(1)運動エネルギーの計算
弾の運動エネルギー(J:ジュール)は、以下の式で求められます。

E = 1/2mv^2(2分の1✖️m✖️v2乗)

•E = 運動エネルギー(J:ジュール)
•m = 弾の質量(kg)
•v = 弾速(m/s)

弾のデータ(ウィンチェスター サボットスラグ)
• 質量:1オンス(約437.5グレイン) = 0.0284 kg
• 初速:1600 fps(約488 m/s)

🔹 発射直後のエネルギー(Muzzle Energy)
E = 1/2✖️0.0284✖️488^2
Eは約3376(J)

つまり、発射直後のエネルギーは約3376(J)となります。

(2)100m・150m・200mでのエネルギー計算
弾は飛翔中に空気抵抗の影響を受けて速度が低下し、それに伴いエネルギーも減少します。
おおよその弾速の低下を考慮すると次のようになります。

距離弾速 (m/s)エネルギー (J)
0m4883376J
50m約440約2747J
100m約390約2160J
150m約345約1691J
200m約300約1278J

(3)なぜ1500Jが目安なのか?
🔹 一般的に、鹿を確実に仕留めるためには1500J以上のエネルギーが必要とされています。
🔹 これは、致命傷を与えられる貫通力と組織破壊力を考えた経験則によるものです。
🔹 100mでは十分なエネルギー(2160J)があり、150mでもギリギリ(1691J)確保できるので、問題なく仕留められます。
🔹 しかし、200mでは1278Jまで低下し、鹿の胴体を貫通しない可能性がある。(貫通するエネルギーの参考として)

ライフル弾との比較

ライフル弾(.308Winや.30-06など)と比べると、サボットスラグは遠距離でのエネルギー保持率が低いのが分かります。

弾種初速 (m/s)初速エネルギー (J)200mエネルギー (J)
12番サボットスラグ4883376J1278J
308Win(150gr)8603860J2520J
30-06(180gr)8204320J2800J

ライフル弾なら200mでも2500J以上のエネルギーが残っているため、十分に致命傷を与えられますが、サボットスラグは200mでは貫通力が落ちて厳しくなるという違いがあります。

サボットスラグ弾の実用範囲まとめ

✅ サボットスラグのエネルギー計算
•100mでは約2160J → 十分に致命傷を与えられる
•150mでは約1691J → ギリギリ仕留められるが、慎重に狙う必要あり
•200mでは約1278J → 仕留めるには不十分な可能性が高い

✅ そのため、サボットスラグでの狩猟は100~150m以内が実用範囲で、200m狙撃は非推奨。

ということで、計算をもとに狩猟の戦略を立てると、最適な射撃距離が見えてきますね!
200mは腕次第で可能なのかな〜と思いながら実践を積み重ねて、新しい発見と技術を身につけていこうと思います。

created by Rinker
¥29,516 (2025/03/11 23:03:12時点 Amazon調べ-詳細)
タイトルとURLをコピーしました